おわぁ、寝てるだけです 本館探さないでくなさい/ブログ主 鈴木薫の他に間借人の文章「tatarskiyの部屋」シリーズも掲載しています

by kaoruSZ

塚本邦雄を「やおい」として読む

 土曜日、意見交換したくてMさんと会う。前夜、「現代詩手帖」の特集「塚本邦雄の宇宙 詩魂玲瓏」を入手、けっこうウキウキと読みはじめたのだが、だいたいの内容がわかった時点で気が滅入った。短歌雑誌ならともかく(とはいっても追悼特集を図書館でそのうち読むと思うが)、「現代詩手帖」にしてこの程度なのか……。

  レオナルド論やプルースト論、カヴァフィス論が同性愛的要素を外しては成り立たないように、塚本論もそれを外しては成り立ちえまい。

 何をいまさら——しかし、「それを外し」た論ばかりが並んだずっしり重い特集一冊、現に出てしまっているのだから、しかもこう書くのが高橋睦郎で、しかも高橋ひとりときているから、まるでそう書くことに意味があるかのようである。

 そりゃ、高橋睦郎の詩は現代詩文庫で読んだ昔は好きだったし、詩集(全篇男根の隠喩から成る)も持っているし、PR誌「銀座百店」の巻末に連載中の、読者の句の撰者としての短評も愛読しているけれど(俳句が解らないと言う人にすすめて喜ばれた)、だからといって昔もいまも彼がメイル・ホモセクシュアル・セクシストであることに変わりはない。そして特集中、同性愛のトピックに触れたのは他に皆無、いや、上田三四二の旧稿があるが、そこで論じられている歌集『水銀伝説』はまるごとランボーとヴェルレーヌの道行きが主題なのだから触れて当然、そうそう今思い出したが、水銀は鉄と化合しないのだそうで、それにひっかけて鉄の化学記号Feをfemmeと読みかえた(作者がそう説明している)、あれは公然たる女嫌いの書でもあったっけ。

 Mさんが塚本を全く知らないというので少々説明する。高橋睦郎は、上野千鶴子が同性愛の言説としては三島、高橋、美輪しか知らずその強烈なミソジニーに反感を覚えて[私は同性愛者を]「差別する」と書いたという、あそこに入っていた名前だと言うと、三島と美輪だけしか覚えていなかったとMさん。この話題が出た東大五月祭でのシンポジウムで、上野さんの口から高橋陸郎の名が出たのを実際聞いているから入っていたのは確実、新聞で同性愛について特集した際の〈編集長〉をつとめたとき、断りなしにレズビアンを無視(これも上野が指摘)したのもこの人だと説明する。今日ウェブで調べると、さらに稲垣足穂の名も加わっている。タルホがミソジニックと言われるとやや首をひねりたくなる。とはいえ、タルホを根拠に、天体や鉱物に対する嗜好は女にはわからないといったことを言い出す輩もいるわけだが。

 自分がそうした認識しか持てなかったことを上野千鶴子は時代の限界と言うんだけど……しかしそれは、上野さんの資質というか、感受性の限界だと思うな(それでいてマッチョの岡井隆のことは好きなんだから)。由紀夫、睦郎、足穂の女性読者だっていたはずだし……そうだ、長野まゆみのような人もいたっけ。

 ホモフォビック(塚本邦雄を論じて同性愛に触れない)か、さもなければホモソーシャルなホモエロティシズムを示唆する論考しかない塚本追悼特集を閉じて、私が思ったことはこうだった。こうした言説から塚本を奪還しなければ。塚本作品を「やおい」として——それが最初から(建て前として)排除している女性読者の読むものとして——読むというのはその一方法だ。

 Mさんと私がそれぞれ付箋をいっぱいつけて持ち寄った『やおい小説論』(上記のような観点は全くないが、ないものねだりをして非難しようというのではない)についてはあらためて。
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by kaoruSZ | 2005-09-12 22:27 | 日々 | Comments(0)