おわぁ、寝てるだけです 本館探さないでくなさい/ブログ主 鈴木薫の他に間借人の文章「tatarskiyの部屋」シリーズも掲載しています

by kaoruSZ

噂の監督 2

 8月24日の記事、大間違いをしていた。『噂の娘』で船に乗っているのは姉の千葉早智子、妹と、姉の見合相手の男(大川平八郎)の方が橋上にいるのだ。橋上から一方的に見下ろす千葉というシーンが私の記憶の中には捏造されている。実際には船上から千葉が二人に気づき、妹の方も気づいてあとずさる——つまり両者とも気づいた——目が合った——ということ。今日、『噂の娘』再見して判明。

 祝日の今日、三回全部見る。11時の回『噂の娘』に続いてカップリングの『雪崩』はじまると眠りがちとなり後半しか見られず。終るとすぐ次の回のために行列を作る人たちがいるが(警備員もそれを助長)、並ぶのは真っ平なので外へ。ねぎラーメンでこの日最初の食事。ブックセンターへ歩き、直前に戻って『君と行く路』。席はまだ十分あった。大川平八郎と佐伯秀男(後者は『女人哀愁』で同定)のイケメン兄弟(それを自覚している設定で笑わせる)、母が芸者上がりのため差別を受けている。母は本質的にはお金のことしか理解しない。兄弟と母、それに兄の恋人の家の執事が話すうち、キャメラがいったんガラス戸の外へ引いて彼らをとらえる技法、他の作にもあった特徴と思う。話は悲劇。「君と行く路」それは死にゆく道なのだ。

 次までは二時間あるのにまたも行列、さっきよりすでに長くなっているが、だめならだめでいいと近くで小豆アイスあんみつ。あずきアイスとあんの半球が並ぶ。小倉とこし、どっちかと聞かれこしあんを選ぶ。つぶした小豆はアイスの方に入っているからね。こしあんの味よく、これならあんみつ以外のものも今度食べたい。再び八重洲ブックセンターへ。入口に、お金出した人に金箔を貼らせる二宮金次郎像(収益をどこかへ寄付する)が立っているのだが、その顏をじっと見上げていた女の子、私が後ろを抜けて店内へ入った直後、傍の父親らしき人に問いを発する——「夜になると動き出す?」 父親「ん……動かない、動かない」

 5時の回も直前に戻り、入るとすぐ満席に。危ないところだった(今回の特集、私が行った日で満席ははじめて)。後部右扉から入り、舞台前を通って左通路を戻り、後部扉からいったん出てまた右扉から入り、ようやく右手に席を見つける。『勝利の日まで』(45年制作、15分のフィルム断片)、半分寝ていたが、エンタツ、アチャコの出るTVヴァラエティ的ナンセンス。その前に市丸が歌い、山田五十鈴が舞っていたっけ……。メガネをかけた高峰秀子と徳川夢声の博士(いちいち右端に名前が出るのでわかりやすい)がロケットでせっせと「笑慰弾」を打ち出すと、南の島に着弾して詰められていた芸人が慰問する。作業にはげみながら高峰も歌う。徳川夢声が南の島のエンタツ、アチャコに呼びかけるところはテレビ中継そのもの。感想はナシ。

『三十三間堂通し矢物語』、タイトル下に昭和二十年六月の文字出る。敗戦の年にあんなのもこんなのも作っていたのか。ここでも、長谷川一夫の正体が明らかになるところで、複数の人物が一堂に会するときの撮り方、『噂の娘』で妹娘の出生の秘密が明らかになる室内や、前述の『君と行く路』と似る。ドラマとしては至極正統的。長谷川一夫文句なくカッコいいし、田中絹代も役にぴったり。長谷川の正体露呈の場面には、田中が繰り返し尋ね、その度に大真面目で偽名を名乗ってかわすユーモアが先行している。

 長谷川が一日に八千本射た通し矢の記録を、田中が主筋の少年に破らせる、その通し矢場面の単調さを成瀬はどう処理したか。基本的に矢を放つカットと、矢が的に当たる(あるいはそれて落ちる)カットの組み合せしかないものを、聴覚におきかえているのだ。矢が的を射ると太鼓が叩かれ、見物衆がどうっと湧き、外れると鉦の音が空しく響く。見るに忍びず家で待つ田中の耳にもそれらの音は届いて、ついには彼女も現場へ駆けつけることになるのだ。
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by kaoruSZ | 2005-09-23 23:32 | ナルセな日々 | Comments(0)