つるかめランドとは何ぞや
2005年 09月 27日覚えのある家何軒か、変わりないのを確認する。冠木門の農家、父の生家もこうだったのだろうと思いつつ前を過ぎる(野菜の出荷をしていたことを思えば、敷地が明治通りまであっても不思議はない。現在の門扉と場所だけは同じ)。日ざかりを歩いているとそのまま眠り込みそうなほどだるい。実は、月曜日はフィルムセンターが休みだから眠くてもいいやと、ほとんど寝ていなかったのだ。左上の犬歯の奥のつけ根とその隣の歯の裏、さらに次の歯とのあいだあたりに軽微な虫歯あり、仮の詰め物を取って削ったあと型取りしもう一度仮の詰め物。この日は歯茎落ち着いてきたからと、深い部分の歯石取りのため麻酔かけられる。それでもかなり痛かったのだが、歯医者を出て歩きはじめると、左の上唇が腫れて(実際にはそうではないのだろうが)異物のように感じられるほど効いている。なんと鼻までしびれていた。親知らず抜いたときの舌の痺れは知っているがこれははじめて。西川口から京浜東北線で延々有楽町まで南下、地下鉄を降りてサンドウィッチをテイクアウト。勤め先に三時に着いて紅茶をいれ、痺れのとれた口(患歯には仮の詰め物がされている)で平らげる。
夜はわけあって山手線の最終(上野どまり)で帰り、うちまで歩く。上野から知らない町(真夜中にしか通ったことがない)を抜けるときいつも思うのは、幽霊というのはこうやって故郷の町に帰ってきて、自分の家が見つからずにさまよう存在であろうということ。「住宅地」とは一軒一軒塀に囲まれ庭があるようなところをいうのだろうからここはそうではあるまい、ただ小さな家がひたすら軒を連ね、コンビニは幹線道路沿いに店を開くのでここにはなく、車も入ってこず人っ子ひとり通らない寝静まった通りを進んでゆく……父もそうやって帰ってくるような気がするし、そして私ももう帰るところはないのだと思う(親の待つ家はもうない)。常磐線のガードをくぐり、しばらく行くと路地の先が仲町通りに通じているのが見分けられる。すでにここは見馴れたテリトリーだ。セブンイレブンでキノコうどんを買い、ピラフに入れた残りの海老半パックを傷む前に片づけようと(先日同じように残していて半パック無駄にしたのだ)、冷蔵庫から出し殻をむく。エビとヒラタケを足してそのままアルミ箔の容器で煮た実だくさんのうどんをよそって食べたときは二時をまわっていたろう。どうもそのまま眠ってしまったらしい(いくら歯医者行ってもこれではだめだ)。気がつくと外はまだ暗い……と思ったら曇りで明るくならないだけ、7時20分と知りあわてて這い出す。