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おわぁ、寝てるだけです 本館探さないでくなさい/ブログ主 鈴木薫の他に間借人の文章「tatarskiyの部屋」シリーズも掲載しています

by kaoruSZ

つるかめランドとは何ぞや

 今日は曇って涼しいが、きのうは夏の陽射しが戻っていた。その中を(十時半の予約で)、このあいだから通っている戸田の歯医者へ。北千住で早朝に人身事故、京浜東北は大井町で「お客様が線路に転落され」たとかで(いずれもホームに入ってから放送で知る)微妙に遅れる。空を見れば秋の雲だし、帰りに西川口行きのバスを待った木蔭のバス停は風が吹き抜けて涼しかったが、それまでに前腕に日を浴びてかゆみが出る(田舎は道が広くて物蔭がないのだ。前回失敗してこの日は日傘を差していたが、それでも)。歯医者を出てから、建て替えた新家が目立つので、戸田の家に寄る前にマルエツのあたりまで遠回りすると、満ち欠けする月のように見えて実はただ欠けているだけのオレンジ色の円が並ぶマルエツのマークが見えず、代りに「つるかめランド」の文字。健康ランドにでも鞍替えしたか? いや、一階は前と同じ食料品だし、日用品、衣類がそこそこあった二階は100円ショップになっているが、階段もエレベーターもあまりにも変わらぬたたずまい(上がってみなかったが)。でも、入口の張り紙は「つるかめ店長」と名告っているから、やっぱりこれが店名なのだ。嫌だなあ、つるかめランドなんてとこで小松菜とか買うのは。

 覚えのある家何軒か、変わりないのを確認する。冠木門の農家、父の生家もこうだったのだろうと思いつつ前を過ぎる(野菜の出荷をしていたことを思えば、敷地が明治通りまであっても不思議はない。現在の門扉と場所だけは同じ)。日ざかりを歩いているとそのまま眠り込みそうなほどだるい。実は、月曜日はフィルムセンターが休みだから眠くてもいいやと、ほとんど寝ていなかったのだ。左上の犬歯の奥のつけ根とその隣の歯の裏、さらに次の歯とのあいだあたりに軽微な虫歯あり、仮の詰め物を取って削ったあと型取りしもう一度仮の詰め物。この日は歯茎落ち着いてきたからと、深い部分の歯石取りのため麻酔かけられる。それでもかなり痛かったのだが、歯医者を出て歩きはじめると、左の上唇が腫れて(実際にはそうではないのだろうが)異物のように感じられるほど効いている。なんと鼻までしびれていた。親知らず抜いたときの舌の痺れは知っているがこれははじめて。西川口から京浜東北線で延々有楽町まで南下、地下鉄を降りてサンドウィッチをテイクアウト。勤め先に三時に着いて紅茶をいれ、痺れのとれた口(患歯には仮の詰め物がされている)で平らげる。

 夜はわけあって山手線の最終(上野どまり)で帰り、うちまで歩く。上野から知らない町(真夜中にしか通ったことがない)を抜けるときいつも思うのは、幽霊というのはこうやって故郷の町に帰ってきて、自分の家が見つからずにさまよう存在であろうということ。「住宅地」とは一軒一軒塀に囲まれ庭があるようなところをいうのだろうからここはそうではあるまい、ただ小さな家がひたすら軒を連ね、コンビニは幹線道路沿いに店を開くのでここにはなく、車も入ってこず人っ子ひとり通らない寝静まった通りを進んでゆく……父もそうやって帰ってくるような気がするし、そして私ももう帰るところはないのだと思う(親の待つ家はもうない)。常磐線のガードをくぐり、しばらく行くと路地の先が仲町通りに通じているのが見分けられる。すでにここは見馴れたテリトリーだ。セブンイレブンでキノコうどんを買い、ピラフに入れた残りの海老半パックを傷む前に片づけようと(先日同じように残していて半パック無駄にしたのだ)、冷蔵庫から出し殻をむく。エビとヒラタケを足してそのままアルミ箔の容器で煮た実だくさんのうどんをよそって食べたときは二時をまわっていたろう。どうもそのまま眠ってしまったらしい(いくら歯医者行ってもこれではだめだ)。気がつくと外はまだ暗い……と思ったら曇りで明るくならないだけ、7時20分と知りあわてて這い出す。
by kaoruSZ | 2005-09-27 16:22 | 日々 | Comments(0)