おわぁ、寝てるだけです 本館探さないでくなさい/ブログ主 鈴木薫の他に間借人の文章「tatarskiyの部屋」シリーズも掲載しています

by kaoruSZ

あの洋館はもうない

 刑部邸に重機が入り、他の棟を壊してメインの洋館に近づいていることは玉井さんいのうえさんのブログで読んで承知していたが、とうとうあの愛らしい不思議なファサードも瓦礫と化してしまったと知る。

 心惹かれる写真サイトを見つけるとリンクしているのだが、そのようにして先日出遭ったRoc写真箱へ、先週の木曜日、何の気なしに行ってみた。花をつけたニラ★とおぼしきひとかたまりの花がアップされている。うちのニラもそういえば道に面した外壁に繁る蔓薔薇の下の菫の隣に咲き出していたっけと思いつつ、添えられた文を読んで、刑部邸のアトリエがとうとう壊されたこと、その前に、建物の足もとに咲いていた花を撮ったものだと知る。白い花はもう一種類見えるが、これはまぎれもなくシャガ、花は小さいながら花弁に紫と黄の模様が入り、一人前にアイリスのかたちをしている。(一つ前の記事に、母が好きだったと書いたところだ。)花々は消え去った建築への供華としてあげられていたのだった。

 うちのシャガはこれよりあと、週末にようやく一輪ひらいた。地中を伝って離れたところにいくらでも新しい葉を伸ばす。うちでは場所が狭いから、他の植物を駆逐して占拠されないようたまに引き抜くが、抜いたのをほうっておくとまたそこから根を張るくらい強い。刑部邸の草木はどうなるのか。土を掘り返してごっそり運び去りでもしなければ半ば野生化した草花たちは生き延びられようが。あとには低層<マンション>が建つという。今度林芙美子記念館を訪ねるときにはどうなっていることか。

★母はニラと呼んでいたが、検索するとニラの花はいかにもアリウム属らしい蘂の目立つもの、ガクが花びら様に発達を遂げた仲間と思われる、星形の白い花とは別ものだ。母が勘違いしていた? 首をかしげつつ、ためしにハナニラと打ち込んでみると、シンプルな見なれた花がヒットした。ずっと野菜のニラだと思い込んでいた(発育が悪くて葉が寝ているのかと思ったが、もともとそういう性質なのだった)が、食用にならない別種だという。食べなくてよかった(もしかしたら、戸田に生えていたのを一度くらい食べたかも……)。

          *

 今日、朝日新聞本社の西側斜面の緑地帯で、真赤なシャクナゲの大木が花盛りなのを見た。八重桜も満開。葉が黄色い八重桜で、子供のときは少しも美しいと思わなかった花だが、今はこれはこれで面白いと思う。八重桜に豊かなヴァリエーションがあることを一度に知ったのは、大阪の造幣局の通り抜けを歩いてから。初めて勤めたところで、無駄に出張に行かされ、結局目的も達成できずに時間があいてしまったときに、勧められて行ったのだ。シャクナゲ、戸田のアパートを建て替える前は、空いた場所に三本ほど地植えにしていた。父はどうやって手に入れたのか、苗を買ったか、誰かにもらったのか、普請の際にいらないから処分してくれと客に言われた庭木をせっせと運んできては植えていたから、あれもそうだったのか。その場所を四畳半と呼んでいたのは、それくらいの広さしかなかったからである。

 しかし、アパートの立て替えで四畳半の草木も行き場をなくし、一部を人にあげてあとは結局処分されてしまった。シャクナゲの一本、真赤ではなくピンク色のところが値打ちなんだと父が言っていた株は大工さんにもらわれて行ったが、そのとき二階に住んでいた私が、早朝物音に気づいて上から見ると、大工さんはせっせとシャクナゲを掘っていた。そのあと父から電話があって、職人が仕事に来ているかと訊いてきたが、誰も来ていなかった(古いアパートを壊す前の準備段階だったのだ)。結局その日は誰も来ずじまいで、父は、天気がいいのにしょうがねえなあシャクナゲだけはすぐ取りにきて、と言っていたが——あのシャクナゲは、今年ピンクの花をつけているだろうか?
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by kaoruSZ | 2006-04-17 14:18 | 日々 | Comments(2)
Commented by GG-1 at 2006-04-18 13:34
コメント&リンク有難う御座います
こちらもTBさせて頂きます
このニラは食用とは別物でしたか
足元にひっそりと咲く姿が、そのときは未だ存在していてこの先消えてゆくであろう者の無言の餞の様に感じられたのです

普段はあまり花に関心が向かないのですがこの時ばかりは特別でした
Commented by kaoruSZ at 2006-04-18 17:37
よくいらして下さいました。刑部邸はせんだって見てしまいましたので、思わず書き込みいたしました。
GG-1さんのお写真は、鉄道や建築物はもちろんですが、その中の、生の一瞬をとらえられた人物がまたよくて……確かに、花にレンズを向けるという感じではないのかもしれませんね。
万世橋下を流れる落花を拝見してリンクさせていただきましたので、まだ日は浅いのですが、ぽつぽつ過去のお写真も拝見しているところです。魅力的なのにどこがいいと言葉でいえないところが写真としてすごいのではなどと、勝手に考えております。
交通博物館は私も来週初めまでに、一度行こうと思っています。万世橋駅の遺構は以前公開した時に見ていますが、子供の時から何度も訪れている好きな場所でしたので。