おわぁ、寝てるだけです 本館探さないでくなさい/ブログ主 鈴木薫の他に間借人の文章「tatarskiyの部屋」シリーズも掲載しています

by kaoruSZ

2005年 10月 28日 ( 1 )

荒唐無稽が足りない

 フィルムセンターの成瀬特集も今週かぎり、水曜夕、初めて見る成瀬作品としてはこれが最後の(今回はという意味。見られなかったのが10本はあるし、入ったのに眠ってしまい見たと言えないのも若干よりもうちょっと多くある)『お國と五平』、私が見た中で一番若い木暮実千代(といってもそんなに若くない)と従者の五平の道行きは、元許婚者で今は夫の仇の山村聰を探す旅。山村がかつて自分に尺八を聞かせてくれたと木暮が口にしただけで、どこで、どんな状況で、と迫る五平、見かけによらずドロドロだ。山村、ダメ侍なので木暮とその父親に見限られ、代りに取った婿を殺して出奔、仇討ちの旅に出た木暮に未練たっぷりで、虚無僧姿で尺八吹き吹きつけ回す。タイトル・ロールの二人、奥方さまは美しい方だ、お供も美男だと科白で言われなくてはわからないのは難点、でも、二人が惹かれあっていて、病に倒れた女主人を寝ずの看病の末、ついに蚊帳をくぐって入った五平がお國の足許に顏を伏せるところはよかった。原作は谷崎だからそりゃそうだろうと思ったり(長旅で痛めた足の手当ては自然な行為でもあるが)、「晴れてめおとに」なっても谷崎は三等車、松子さんは侍女ならぬ女中とさびしく二等車、御主人[それにしても今朝のワイドショーの連中、「天皇の御主人」てそれ何だよ]じゃなくて従者だからお泊まりも別(ただし夜伽はつとめる)、というのを思い出したり。

 それにしても山村、「わしは死にたくない」と堂々と口走る(何回言った?)侍失格ぶりに加えて、その女とは一度やってるんだぜ、ザマー見ろ(「これだけは言うまいと思ったが」)と最後っ屁を放ってから死ぬサイテー男(おかげで五平はおかしくなってしまう)、『山の音』で原節子を泣かせるわずか二年前にはこんな役もやっていたのだ。

 ちらちら目をやっていた『成瀬巳喜男の世界へ』(山根貞雄編、筑摩書房)、もう特集も終ることだしじっくり読みはじめたところ、蓮實論文の凡庸さにやや目を疑い(「やや」であるのは、すでにわかっていたことでもあるから。序文は資料として貴重だし、私などが成瀬50本も見てしまうというのも、蓮實が仕掛けなければそもそもありえなかったことではあるが)、阿部嘉昭『成瀬巳喜男 映画の女性性』(河出書房新社)と一緒くたにしてけなしたくなるものの、熟読していないので今は見送る。
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by kaoruSZ | 2005-10-28 23:18 | ナルセな日々 | Comments(0)